セレナードシリーズ 登場曲集

登場曲と共に物語を振り返ります。
登場順に並んでいます。

作中の演奏者、動画リンク(曲名をクリック!)と、本文中の描写を抜粋してまとめています。
本編に関係の無い作者(素人)の駄弁付き。

登場:プロローグ>Prélude~プレリュード~
状況:ショウのイヤホンで
陽の光を浴びながら爽やかな風が舞うような、美しい風景が浮かぶ。 
プレリュード(前奏曲)という名に相応しく、これから何かが起こりそうだと予感させる曲だ。

この曲を聴いている時に思うことを、そのまま書きました。知っている限り最も情景が浮かびやすい前奏曲で、始まりの場面にピッタリだと思い選曲。
テンポ指示は tempo rubato(自由な速度で)。
自分的、夏に弾きたい曲です。

登場:1 ざわつく春夜>1-1 Étude~エチュード~
演奏者:外山明里
状況:昼休み,音楽室
第三楽章は音が切れ間なく動きまわるのが特徴で、最後まで緊迫感を維持して演奏しなければならない。

登場:3 The Prince of piano>3-1 Passepied~パスピエ~
演奏者:外山明里
状況:毎日コンクール地区本選
緊張感を保ったまま嵐のように、時に明るく、時に自問自答するかのようにしながら曲が進んでいく。

緊張感が続き、何かに駆り立てられているかのような気分になる第三楽章。演奏者の集中力がダイレクトに伝わってきて、聴いていると試されているような気がしてきて手が汗ばみます。


登場:1 ざわつく春夜>1-2 Fugue~フーガ~
演奏者:外山明里
状況:放課後,音楽室(後日 毎日コンクール地区予選)
しなやかに音を繋ぎながらも一つ一つの打鍵を際立たせ、立体的に響かせていく。

バッハの時代は、ピアノが無かった……。というわけで当時の『響き』を完全再現するのは不可能なため、『構造』の理解が大切とのこと。バッハが得意なのは理系という傾向にも納得。
ちなみに、三人は理系クラスに在籍しています。在籍しているだけではなくて、中身も理系な設定です。
アキラがかっこよくバッハを弾くシーンも書きたかった。


登場:1 ざわつく春夜>1-3 Rigaudon~リゴドン~
演奏者:外山明里
状況:放課後,音楽室(後日 毎日コンクール地区予選)
歯切れのいいスタッカートで弾き続け、かつ和音をしっかりと取るには相応の技術が必要だ。

おっ、ラヴェル初登場。
高音と低音の掛け合いが秀逸で、軽やかで、楽しげで、好きな曲です。ついでに言うと、作中のある人物のイメージ曲です。
そう、もちろん明里です。生き生きとした主部も、憂いを帯びた中間部も明里のイメージに合います(笑)


登場:2 白昼の狂風>2-1 Caprice~カプリース~
状況:アキラからのLI〇E
アクロバティックな動きと華やかさがあり、演奏効果は高そうだ。

登場:5 L.S.P>5-2 Romance~ロマンス~
演奏者:唐木田ショウ(Primo)&高峯アキラ(Secondo)
状況:学校祭,音楽室
アキラの両腕に被さって、四オクターブにわたる和音を力強く放つ。(中略)
傍若無人なパートナーに見せつけるつもりで、高音のソロを繊細に、繊細に紡ぐ。

一楽章二分程度の間にどんどん展開して、見るのも弾くのも楽しいんですよね、コレ。パートナーと勢いよく走り抜ける快感!リズムもハマると気持ちいい!


登場:2 白昼の狂風>2-2 Rhapsodie~ラプソディ~
状況:アキラのイヤホンで『あいみみ』
教室に戻った僕らは、アキラの机に二人の椅子を寄せて、〈仮面舞踏会〉の有名なフレーズに聴き入った。

本当に有名な曲ですよね。浅田真央さんのプログラムの印象が強いです。
元が管弦楽の曲なので、連弾用に編曲された楽譜は何種類かあります。ワルツのリズムを意識して、しっかりとスタッカートをつけるのが好きです。

登場:2 白昼の狂風>2-3 Valse~ワルツ~
演奏者:唐木田ショウ
状況:自宅
レッスンで見てもらったことはなく、小学生の時に自主的に譜読みした曲。(中略)
音が僅かに濁った。(中略)
同音の連打でところどころ音が重なってしまう。(中略)
ここからは左右共に音符が広範囲にあり、右手にはオクターブ幅のポジション移動が、左手には軽い跳躍がある。音を外さないよう、慎重に鍵盤を捉える。

この練習描写はなんと、実際にウン年間のブランクがある状態で弾いた自分の体験を思い出しつつ、それを全て包み隠さず書いたものです。
いや、恥ずかし……(泣)指が回る回らない以前に、鍵盤のつかみ方がわからなくなるんですよね。
し・か・し!
せいぜい中級程度の難易度ですし、ショウくんほどの実力の持ち主ならばブランクがあってもここまで酷くならないと思います(まあブランクがある状態の感覚なんて、実際に体験してみないと分からないですけどね)。少し違和感が残りましたが、リアリティ追求のためです……。

登場:3 The Prince of piano>3-1 Passepied~パスピエ~
演奏者:外山明里
状況:毎日コンクール地区本選
外山は腕と手首をしなやかに使った粒の揃った音で、きちんと曲の美しさを出せている。

『〈黒鍵〉なのに白鍵も弾くじゃん』と、よく突っ込まれている曲です(謎認識)。(それはそうだけど、右手に至ってはたった1音を除いて全部黒鍵とか、充分すぎるじゃん……許してあげてよ……)と、そのたびに思ってしまいます(笑)
エチュードの中でも人気曲の1つですが、ショパン自身はあまり高く評価していなかったようです。

登場:3 The Prince of piano>3-2 Sonate~ソナタ~
演奏者:高峯アキラ
状況:毎日コンクール地区本選
美しく揃った、端正なトレモロ。
烈々たるパッセージ。
圧倒的。その言葉が頭に浮かぶ。

印象的で打楽器的な連打から始まり、劇的な強弱を伴いつつ、執拗な繰り返しを経て堂々と終わります。アキラは見事な支配コントロール力で、ショウくんの心をガッチリ掴んでしまいました(『王子様なんて冗談じゃない。(略)支配する魔王だ。』byショウ)。
モデルとなった高校同期は作中のアキラよりもずっと若い年齢で弾いていましたが、参考にさせてもらいました。

登場:3 The Prince of piano>3-3 Élégie~エレジー~
演奏者:高峯アキラ
状況:毎日コンクール地区本選
せわしなく上下を動き回り、焦燥感を掻き立てる高速のパッセージ。まるで緊迫感そのものが渦巻いているかのようだ。

ぼうっとしていたら、初っ端の不協和音で脳天を撃ち抜きます。演奏効果の高い曲ですが、油断してパッセージの最高音を外すと途端に間抜けに……。
強烈な主部もかっこいいですが、クリスマス・キャロルの『眠れ、幼子イエス』が使われている甘く優しい中間部が好きです。

登場:4 アディクション>4-1 Ballade~バラード~
状況:練習,音楽準備室

登場:5 L.S.P>5-2 Romance~ロマンス~
演奏者:唐木田ショウ(Primo)&高峯アキラ(Secondo)
状況:学校祭,音楽室
このグリッサンドが、野獣にかかった魔法を解く鍵なのだ。
連続するグリッサンドで、このフィナーレを表現する。

この並びだと、プリモ(ショウ)はグリッサンド三昧ですね。
いっそ、ピアノ王子デュオショウとアキラに『マ・メール・ロワ』全曲通しで演奏して欲しい!第3曲〈パゴダの女王レドロネット〉で、演奏中2人が楽しげにアイコンタクトを交わす……なんてどうですか?

登場:4 アディクション>4-2 Fantaisie~ファンタジア~
状況:BGM,教室

ガーシュインと言えば〈ラプソディ・イン・ブルー〉が超有名(のだめ等)ですが、実は2人兄弟。
兄作詞の歌が、弟によってピアノと管弦楽のための変奏曲になりました。それで“変奏曲”。

登場:5 L.S.P>5-1 Bagatelle~バガテル~
演奏者:不明
状況:学校祭,音楽室
冒頭を聴くだけで、二度の助走と力強い羽ばたき、まさに“飛翔”を感じられる曲だ。

内声部の旋律が重要なのが、いかにもシューマンらしいなあと思わされる曲。
ブーニンの真似がしたくてとりあえず冒頭の譜読みをするのも、あるあるです(?)

登場:5 L.S.P>5-3 Toccata~トッカータ~
演奏者:外山明里
状況:学校祭,音楽室
ショパンの〈ノクターン13番〉の悲痛なハーモニーを歌いきり、音楽室が拍手で包まれる。

旋律は華やかですが、ゆったりとした曲調です。込み上げる悲痛さと、華やかさ、静けさ。これらの不思議な融合が聴く人を惹き込むのでしょう……。
ある高校同期が『ゴルゴダの丘』と改題して研究していたのが、今でもとても印象に残っています。
↑ショパンコンクール優勝者のライブ録音を最速でリリースするという、コンクール開始前からされていた企画によるCD

登場:5 L.S.P>5-3 Toccata~トッカータ~
演奏者:高峯アキラ
状況:学校祭,音楽室
アキラの手は僕よりも少し小さいくらいで、大きいとは言い難い。
しかしアキラの演奏は、このとてつもない難曲を“難曲と感じさせない”。

これもモデルとなった高校同期が、作中のアキラよりも若い年齢で弾いていた曲です。彼のノンレガートを際立たせる解釈が好きです。アキラと同じで、彼の手も決して大きいとは言えないのですが、様々な難曲を軽々と弾き切ってしまうので畏れ入ります。

登場:5 L.S.P>5-3 Toccata~トッカータ~
演奏者:高峯アキラ
状況:学校祭,音楽室
素早い手の移動や掴みにくい和音などの箇所をものともせず、旋律を常に鮮明に引き立てる。

インテンポで弾くには、他とは違う『指さばき』が必要。映像で見ると、よりそう感じます。等速144指定って、冒頭(右手で素早く四つ抑えるところ)から手がもげてしまうのでは?() 
ラヴェル、憧れるけど難しい曲ばかりです。

登場:5.5 無言歌>Romance sans paroles
演奏者:唐木田ショウ(中2)
状況:ジュニア音コン地区予選
そのスピード感と運指の複雑さ故に指がもつれやすい曲だが、頭で考えなくとも指が動くくらいには弾き込んでいる。
狭い音域を高速で駆け巡る。
美しくも、塞ぎ込むような陰鬱さ。絶え間ない音の粒の連続。

(途中で絶対止まれじないじゃん)と想像して身震いしてしまいます。いや、どの曲でも止まっちゃダメですけど(笑)
右手が高速で動き回る常動曲なので少しも流れを止められませんし、突っかかった瞬間プツリと音楽が切れてオワリ、の恐怖感があります。
そして、よりによってコンクール本番で止まってしまった中学二年生のショウくん……恐怖ですね。

登場:6 イマジネ>6-1 Barcarole~バルカローレ~
状況:BGM,予備校

どちらも勉強で疲れた受験生に癒しを与えてくれそう。『大ポロネーズが聴きたいんだけど!』と一部の生徒は不服かもしれませんが、BGMにするには華麗すぎますものね……仕方ない。

登場:7 これはきっと、ボクにとってのセレナードだ>7-1 Novelette~ノヴェレッテ~
状況:ショウの脳内メロディ
寒い季節になるほど、そして別れの季節が近づいてくるほど……もの寂しくなる瞬間が増えてどうしようもない。しかし、こんな「寂しさ」や「孤独」で感傷的になるのは嫌いじゃない。

全く関係ないですが、この曲を聴くと真っ先に柊あおい先生の『銀色のハーモニー』という少女漫画を思い出します。ちなみに、人生で初めて読んだ漫画はくらもちふさこ先生の『いつもポケットにショパン』。きしんちゃん、かっくいいぜ……。
動画は、次回ショパコンへの出場が決まっている牛田智大さんの演奏です。ショパコンと言えば、「今年は忙しくて配信も見られそうにないなぁ」と思っていましたが、コロナウイルスの関係で一年延期になってしまいました。
本当に関係が無い(笑)

登場:7 これはきっと、ボクにとってのセレナードだ>7-1 Novelette~ノヴェレッテ~
状況:アキラの脳内メロディ
アキラもこの寂寥感に、美しいメロディを連想したのだ。僕とアキラが感性を一部共有しているようで、嬉しさが広がった。

自分がショウくんの心境で実際に聴きたくなったのは〈トロイメライ〉ではなく、この曲です。とても綺麗な響きでテクニックもほとんど必要なく、短い曲なのでちょっとしたリフレッシュにも効果的です。
『ハイドンの名による』というタイトルの通り、『HAYDN』の文字列を音名に変換したモチーフが登場します。ぜひ調べて見てください。

登場:7 これはきっと、ボクにとってのセレナードだ>7-2 Pavane~パヴァーヌ~
演奏者:男子高校生
状況:受賞者コンサート
〈マゼッパ〉の音の奔流を感じながら、ふとアキラのことを想った。

結構前に、電子ピアノのCM曲になっていましたね。
難曲の代名詞みたいな有名曲。『超絶技巧』というタイトルからして圧がすごい。リストの難曲は難しさが前面に出た派手なものが多くて、こんなのをリスト様本人(鬼才カリスマイケメンピアノ貴公子)が弾いてたらそりゃあ貴婦人方が失神するのもやむ無し……。

登場:7 これはきっと、ボクにとってのセレナードだ>7-2 Pavane~パヴァーヌ~
演奏者:高峯アキラ
状況:受賞者コンサート
あまりにも優しい音だった。
切ないほどに、優しい。

登場:終 Dear Prince>Sérénade ~セレナード~ 前編(以下同)
彼が作り出すこの空間にはきっと暴力も、荒々しい感情も最初から無かったに違いない。そんな突拍子も無いことを考えた。

クラシックではこの曲が一番好き、という人は結構いるんじゃないでしょうか。高校同期だけで二人もいました。タイトルのアトラクティブな響きもニクいですよね。
私が初めて聴いたのは、繊細すぎるくらい感受性の強い、同じ教室のお姉さんが発表会で弾いていた時です。お姉さんは弾き合い会に来なかったので、本番で初めて聴きました。
発表会での選曲が小6から
スケ2→水の戯れ→バラ3→パヴァーヌ
で、ガクッと難易度を落として周囲を意外がらせたのはアキラと共通しています。
でもやっぱり、ある程度の難曲を弾く技術があってこそ〈パヴァーヌ〉も余裕を持った表現で弾きこなせるのかなぁと思います。『技術』があっての『音楽性』『表現力』ですから……。作中のアキラと同様、音の粒は美しいものの、敢えて感情を込めすぎないサラリとした演奏でした。
その時私は、見事に客席で泣かされてしまいました。

さて、この肖像画は何でしょう?答えはこの下です。
↑ルーブル美術館でラヴェルにインスピレーションを与えたとされる、マルガリータ王女の肖像画

登場:7.5 夢想>Rêverie
演奏者:唐木田ショウ(小2)
状況:レッスン,神成ピアノ教室
家に入ると、綺麗な音楽が聴こえてきた。

遠い昔の思い出が、断片的な夢のように現れる……というイメージで書いた章のBGMに選曲。ベルガマスクのプレリュードも然り、ドビュッシーは映像が浮かびやすいです。
小学2年生か……。“弾く”のは簡単なのですが、満足な“演奏”をするのは意外と難しい。ピ〇ィナではE級の課題曲になっていたそうです。

登場:終 Dear Prince>Sérénade ~セレナード~ 前編
演奏者:高峯アキラ
状況:受賞者コンサート
多種多彩の同音連打、超速パッセージ、二重グリッサンド、エトセトラ。 

あの頃は「弾いてみたい」なんて簡単に考えていたが、(中略)これは長く練習したからといって弾ける類の曲ではない。

……ハイ。『弾いてみたい』なんて簡単に言っていました(私が)。
でも、ショウくん自身はこのように言っていますが、作者は、ショウくんなら今からでも“演奏”できるようになる気がしてなりません。私が言えたことではないけど、とにかく挑戦だよショウくん!自信もって!


◎ラヴェル/水の戯れ

夕影巴絵

ゆうかげともえ、と読みます。

哀感パヴァーヌ

Sorrow Pavane 夕影巴絵のホームページへようこそ

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