読書感想メモ 2021.1まとめ『まどろみ消去』『ゴーストハント3』『ゴーストハント4』『黒猫の三角』『2.43 清陰高校男子バレー部(1)』『トーマの心臓』
※自分のための備忘録的な感想メモ。まとまりなく長々とメモするだけで、有益な考察などは提供できません
※小説のネタバレが嫌な人は注意してください
今月読了した本のうち、以下にメモした本:5冊(+漫画 1)
『まどろみ消去 MISSING UNDER THE MISTLETOE』森博嗣
多様な作風にびっくり!オチの付け方も様々な11編、それぞれ楽しめた。解説は萩尾望都先生。
『短編とは長編で書ける物語を短く書くことだ』の言葉通り、文量は確かに短編なのだが、長編を読んだ後のような読了感。長編を短編に圧縮した分、一文一文の効果が高められていて、中でもオチの一文が凄まじく感じた。オチで読者が受けるのは、今流行りの“どんでん返しの衝撃”というよりは、「これ以上無い解が提示されてしまった……」という圧倒的“納得感”。
お気に入りは『キシマ先生の静かな生活』。お気に入りにするには少し、寂しすぎたかもしれない。最も印象に残った、にしておこう。
S&Mシリーズの短編も二つ収録されたおり、『ミステリィ対戦の前夜』はどこか違和感ある舞台で繰り広げられるミステリィ研の会議が出す案と反応が面白く(ダイイングメッセージ『イホエ』の話は思わず吹き出しそうになってしまった)、『誰もいなくなった』は犀川先生の登場に歓喜。学生の一人が小声で呟いた一言、『あれが……、犀川先生か』。そうだよね、読者はもう「犀川先生はそういう方だ」と慣れてしまっていた部分もあるけれど、学生はそういう反応になるよね、と(笑)
森先生の作品から感じる秩序と抽象、古典と斬新、優しい冷徹さ──そうか、ラヴェルの曲と似ているんだ。つまり、洗練された矛盾。自分が好むものの共通項が見えてきた気がする(笑)
『ゴーストハント3 乙女ノ祈リ』小野不由美
仲間たちのキャラが立ち始めた2巻に続いて、3巻ではナルも言葉数が多くなり、キャラがどんどんこちら側へ近づいてきてくれた。麻衣の夢の伏線も回収され始めて、次巻への期待が高まる。
そして、ぼーさんファン必見の情報が盛りだくさん。私は原作読了までなるべく登場人物のビジュアルを目に入れたくなかったのだが、この巻を読んでぼーさんのビジュアルが気になりすぎて、つい調べてじっくりと見てしまった。これは……想像以上の色男(笑)
初めは、このシリーズの説明にある『科学で突き詰めていく』の意味を少し勘違いしていた。科学は超常現象の対極にあるものだと思っていたが、恐らくそうではなく、つまり、超常現象が科学を包含している。自然科学で説明できない現象を超常現象といい、科学的な調査を突き詰めていけば高次の超常現象に辿り着くことができる、という今の理解であっているかな?
ホラー×ミステリの本書は、超常現象に関する定義などを一旦読者に提示してから、巧妙に散らばったヒントを丁寧に丁寧に、“超常現象の論理”に従って組み立てていく。このシリーズはホラー小説でもあり青春小説でもあり、また、ミステリの型を取ったまごうかたなきミステリ小説でもある。
特に今巻はそのミステリ部分が冴え渡り、“犯人がわからない”という不安感、緊迫感の強い作品だった。
(以下、オタク口調が出るので注意)
『ゴーストハント4 死霊遊戯』小野不由美
麻衣好きだーーー!!!皆好きだーーーーッ!!!(アホの語彙力)
味方すら欺いて結局万事解決しちゃうというパターン、定番だがものすごく緊迫感があって、まんまと最後までドキドキしてしまった。
3巻は人の悪意を感じた分、色々な意味で不気味だった。そして4巻はまさに、純粋な恐怖。終盤になるにつれて増す絶望感。個人的には2巻と4巻は“オバケ的な怖さ”が強いと感じた。私のようにホラー耐性の無い方は深夜に読まないことをオススメする(笑)
松山に対して、読者(私も)は終始イライラが止まらない。この作品が一人称視点で本当によかった、と思った。一人称視点で麻衣ちゃんがいつも通り、明るくハッキリと地の文で腹を立ててくれたおかげで、読者は松山を呪わずに済みました……ありがとう。
小中高通して、コックリさん(またはそれに類似したもの)が私の周りで流行っていたことはなかったなぁ。学校の七不思議ならぬ二不思議くらいならあった気がするけど。
私のツボ要素である“眼鏡”、“頭がキレる(怒ではなく、回転が早い的な意味で)”、“どこか食えない”が三拍子揃った新キャラの安原少年は、今後もレギュラーになるのかな?
次巻を早く読みたいのですが、発売日3月24日で絶望中……。早く読みたい。
『黒猫の三角 Delta in the darkness』森博嗣
Vシリーズ1作目。S&Mシリーズの特色だった斬新なトリックや状況設定は控えめで、これまでの作品に較べると王道な探偵小説のイメージを持った(感覚がおかしくなっているかも?)。それにしては登場人物たちに謎が多いし、一筋縄では行かないなーとワクワク。
前半は保呂草や紅子の思考に追いつけず、理系用語満載のS&Mシリーズですら感じたことがないほどの、S&Mシリーズとはまた違った意味での置いてけぼり感にヒヤヒヤした。S&Mでは萌絵の幾分か常識的(……?)な視点を通して犀川や真賀田四季を見ることができたが、Vはそもそも語り手の保呂草自身にクセがあり、保呂草の視点を通して紅子を見ても余計に混乱する……とでも言おうか。
しかし、後半になるにつれて次々とピースがハマっていく体験が最高にスリリング!7章なんかゾクゾクが止まらない。『林選弱桑』なんて、一体どのように思いついたのだろうか?調べるまで本当に存在する四字熟語だと思っていた(小説として世に出ている時点で“存在”はしているかもしれない)。
人を殺してはいけない理由は?何が正常で何が異常なの?保呂草と紅子の思考を読み取るのに必死で、私には答えが出せそうにない。この問いは、シリーズ通してのテーマになりそう。
事件に直接関わり答えが明確に示される謎と、物語の端々に漂って最後まで明確な答えが示されない小さな謎。読んでいる間、思考力の柔軟さをずっと試されてる。
(2作目『人形式モナリザ』に出てきたジョーク、歯医者の待合室の意味がわかった人は教えてください……)
(以下、オタク口調が出るので注意)
『2.43 清陰高校男子バレー部(1)』壁井ユカコ
ノイタミナ枠でアニメ化されるとのことで、店頭に並んでいたのを衝動買い。
正直、最初はあまりハマらないな〜と思いつつ読んでいた。が、徐々にいわゆる“キャラ萌え”を感じ始め……。
第2話では不覚にもときめいてしまった。自分のキャラの好みはあくまで『余裕感満載男子』であって、『顔赤くなっちゃう系男子』ではないと思っていたんだけど。
あと、第3話最後の『下心』って、そういうことですか!? 青木さんが灰島を気に入らない理由って、““嫉妬””だったんですか……?
小田を主将にするために生徒会の副会長(兼任不可)になったのも、小田に毒を吐かないのも、すべて“可哀想な奴への同情”と小田に取られているの可哀想……。純粋に好き(多分)だからやっていることなのに……。
「小手先だけじゃ手に入らないものもある」というセリフも、すべてがそういう意味に見えてきてつらい。きっと頭が切れるが故に、色々な事態を想定してしまい告えないんでしょう……。
今後の動向に注目したいシリーズです。上の考察もどき(?)が的外れだったら笑ってください。
(漫画)『トーマの心臓』萩尾望都
仄暗い空気がなお一層、美しい少年たちを引き立てる。
そして、トーマの死の謎が放っていた不気味さは、409ページ(※小学館文庫)で一瞬にして開ける。この時の感覚は、コマの中を移ろうユーリと全く同化していた。
最初は押し付けがましい自己満足的な動機だと思われていたが、この瞬間、あっという間もなく眩いほどの純粋な愛に変わる。
ユーリの絶望的な過去の因縁(神を捨ててサイフリートに跪いてしまった)がしっかりと希望のある未来(神父を目指すという進路)に繋がり、あれだけ危うい雰囲気を放っていた物語が救いを見いだしてサッパリと解決、終わる様も美しい。
読了後は、序盤からは想像もできなかった清々しさと、このような物語独特の切なく冷たい温かさに圧倒されて、呆然としてしまった。
0コメント