牛田智大さんの演奏 二次予選
一次予選の時も感想を書きましたが、二次予選は一次予選とは違った印象を受けました。せっかくなので、また書いてみます。
舞台裏での待機時間は、やや手持ち無沙汰な様子。カメラに映されている時間も長かったので、それが負担にならないかと少し心配でしたが、にこやかに手を振ってくれましたね。
カメラに向かって見せてくれたポールアンドジョーの猫ハンカチ(誕生日の友達へ色違いのハンカチを贈ったことがあるので、すぐわかっちゃいました笑)は、愛猫・りおちゃんをイメージしたものですよね。きっと。
ワルツOp.42。終始軽やかで気品ある演奏。要所要所にゴージャスな演出もあり、ゴテゴテしているわけでも軽すぎるわけでもなく、バランスのいいエレガントなワルツだと思いました。
バラードOp.52、伸びやかに歌う旋律。右手と左手で拍の頭をずらす表現が見られましたが、くどさは無く、曲の美しさを引き出していて素敵でした。終盤〜コーダはテンポを落とさず弾いているにも関わらず、一音一音に集中と丁寧さが行き渡っているおかげで、演奏の解像度が高く感じられました。関係のない鍵盤に触れてしまった箇所はありましたが、技巧的な粗も見られない素晴らしい完成度の高さだと思いました。凄くよく弾き込んだのだと思いますし、集中力の高さも完成度の高さに直結していそうです。
コーダの激しさに共感するような表情でバラ4を弾き終えたかと思いきや、息もつかずに舟歌へ。
え、そのテンションのまま舟歌に入るの!?と私は息を飲みましたが、曲と曲の間を空けすぎないのも聴き手に負担を掛けない工夫になりそうですね。
舟歌Op.60。フォルテやフォルテッシモは芯のある太い音で、『遠くの湖に浮かぶ小舟』ではなく、まさに『櫂を漕いでしっかりと前進していく舟』のようだと感じました。三度のトリルまで一音一音しっかりと聴かせる丁寧さも健在。ヤマハCFXのキラキラと響く音が、光を反射する水面の眩さのイメージとマッチしていて、まさにこのプログラムの『理想』というテーマ(←牛田さんのTwitter参照)に相応しく、輝かしい舟歌でした。
ポロネーズOp.53は、この曲の勇ましさに乗り切った、普段の彼からは想像もつかない超・超・ダイナミックな演奏。今回はやはり低音が響く分厚い演奏が続きますね。最初から最後まで深く力強い打鍵の連続で、鍵盤に滴る汗も意に介さない熱演。難所として知られる中間部の左手オクターブ連続部も歯切れよく決まっており、立派な英雄ポロネーズでした!
今回も本番1時間前に牛田さん自身のTwitterでプログラムの解説が。ありがたく読ませていただきました。
Chopin Instituteの公式Twitterでアップされていたショートインタビュー動画はこちら。テンポ設定について語っています。
上の動画とは別にYouTubeでアップされていたこちらの二次予選後インタビューによると、小さい頃から『緊張しやすい』とのこと。いつも落ち着いて演奏しているように見えるのですが、それも努力の賜物なんですね。『(もちろん客席はわからないけれど)舞台に立っている人の中で自分以上に作品を深く研究した人はいないと思えるくらいまで勉強すること』が何よりも緊張を無くす方法だと思う、という言葉からはストイックさが滲み出ています。
二次予選は想定外のスケールの大きさの連続で、いい意味で彼の演奏のイメージが更新されました。
ところで、演奏が始まったばかりの時は彼の右手の爪が割れて?いるのが気になったのですが、すぐに忘れるくらい惹き込まれました。スケールの大きい演奏続きでしたが、大丈夫だったのでしょうか……早く完治しますように。
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