読書感想メモ『χの悲劇 The Tragedy of χ』森博嗣
『χの悲劇』とそれ以前に刊行された森ミス作品(S&Mシリーズ、Vシリーズ、四季シリーズ、百年シリーズ、Gシリーズ、Xシリーズ、Wシリーズ)を全て読了した人以外、ぜっっったいに読まないでください。
↓↓↓
いいですか? 読了していない人は、ぜっっったいに読まないでください!!!
ネタバレ注意、なんて可愛いもんじゃないです。この1作で相関図が覆りまくっています。本編を読む前にネタバレを少しでも覗いてしまうと、あまりにショッキングすぎて、ショック死してしまう可能性があります。
命、大切にしよう
↓↓↓
(読みながらメモしてたもの↓)
ニックネームが『ジェリィ』だった小山田という名の紳士と、彼の息子。ジェリィフィッシュ、日本語ではクラゲ。海月。息子は、組織に追われているエックス。だから海月……エックスは、加部谷に『僕に関わらない方がいい』(from『α』)って言ったの???ハ???待って、え、開始30ページですでに泣きそう。助けて……。いや、まだエックス=海月と決まったわけではない。
やっぱり、エックスじゃなくてχだったんだ。『χ』の読み方はカイ、つまり海。じゃあ、月を仄めかすメッセージもあるのかな?見当違いであってほしい。χ≠海月で頼む。
ああ……やはり。『ミナス』はギリシャ語で月。海月。もう、森先生めちゃくちゃヒント(というか答え)くれるじゃん……。
待って、母?各務亜樹良が?え?ナニヲイッテイルノ!?父は!?!?チチハダレ!?!?
待って、金(子)さんや。彼女はどうした……?こんなところで何やってるの……?え?え?
読みながら心の叫びを書き付けていた私のメモはここ(姉が飛行機事故で死んだ〜的な発言が出たところ)で途絶えていました。
もう、読了後も何から書いていいのかさっぱりわかりません。わからんて!
とりあえず、相関図がぐっちゃぐちゃになりました。ウン年越しのどんでん返し祭り。幸か不幸か、すでに述べた通り、『ジェリィ』というワードが出た時点でカイ(χ)の正体には見当がついていたので、読むのが本当にしんどかった……(幸→最初から最後までドキドキしながら読めた 不幸→しんどすぎた)。
それじゃあ、各務&保呂草カップルは、西之園萌絵にとって天敵どころの騒ぎじゃないわけか……。親の仇とそのパートナ(保呂草=小山田真一かどうかは確信が持てません※後述)。
そして、2人の息子である海月は、親の仇の息子なわけで……だから、海月は萌絵の存在を気にして、萌絵の行くところに自分も行った(C大→W大)のかな。追ってくる組織から逃げる、という意図もあったのかもしれないけれど。
仮に小山田=保呂草だとすると……犀川先生は、飛行機事故について調べていたんだよね?それじゃあ、もし小山田=保呂草さんだとしたら……保呂草さんが関与してたことに、犀川先生が気がついたら……? まさか、すでに気がついていて黙っているなんてことはないですよね……?
犀川先生は、保呂草さんを憎む? 保呂草さんとへっくんの間にはそれはもう尊い友人関係があるんじゃなかったの!?泣
さらにこれも、もし小山田=保呂草さんだったら……という仮定の下での話ですが、大笛梨枝さんが『恋恋蓮歩の演習』で疑っていた通り、"保呂草"はやはり本名じゃなかったということになりますね。小山田も偽名。じゃあ、海月(ジェリーフィッシュ)が本名? 保呂草にしろ海月にしろ変わった苗字。まあ、小山田=保呂草とは本当に限らない(と思いたい)ので、聞き流してください……。
それから、大事なのがこの作品の時系列。これまでのGシリーズからかなり年月が経過していたんですね。
エックス(χ、カイ)のことを島田さんが『若くはないが、若々しく見える』と表現していたり(私はこの時点でエックスの正体を察していたので、ん?と思いました)、島田さんの記憶力が鈍っていたり、そこにある技術が今よりかなり発展していそうだったり。
ひっかかりを覚える場面はいくつもあったんですよ。
でも、まさか何十年も年月が経っているとは最後まで全く気が付けませんでした。Vシリーズは過去に遡り、こちらは未来に進み。方向性は違えど、この手に二度も引っかかってしまった。悔しい。
(※保呂草さんと小山田さんの正体について)
カイ曰く、小山田さんは飛行機爆破が原因で真賀田の研究所を去った。その後、突然倒れて死んだ。近くにいた各務さんは行方不明になった、ということです。
美大出身の保呂草さんが実は工学の方面にも明るい、なんてことがあります? いくら頭が良くても、プログラマとしてかなり高度な知識を習得していなければ研究所では働けませんよね???
それに、小山田=保呂草だなんて、読者の9割が予想しそうな、そんな簡単にわかる正体が答えなんですか!?!?
というわけで、小山田=保呂草さんと決めつけるのは早計かも(むしろ間違いであって欲しいという願望込の感想)。
でも、プログラマとは無関係の仕事をしていた、という可能性もあるか……。四季シリーズを読んだ限り、真賀田四季は保呂草さんのことをそこそこ気に入っているはずだし。しかも、各務さんは小山田さんの死に際に彼の近くにいたらしいですから、そんなに親密な間柄なら、やはり小山田さんの正体は保呂草さん以外に有り得ないのでは?という気もしてきます。各務亜樹良が保呂草潤平以外の男性とそこまで深い仲になるって、想像しにくい。
それでも、小山田=保呂草さんだったら、周りの人達があまりにも不幸すぎるから。そして、保呂草さんにそんな訳の分からない死に方をして欲しくないから。私は小山田=保呂草説をどうにか崩したいのです……泣
一応、小山田=保呂草だけど、実は死んでいない、という説も考えました。狙われたから、小山田は死んだと見せかけるためにカモフラージュした、みたいな。カモフラージュしたまま、放っておかれたカイが不憫ですが……。保呂草さんが飛行機事故に関与していた、という事実も結局変わらないし。
全部見当違いかも。読み返さないと、細かいこと覚えてないから、記憶違いによる矛盾もありそうだし……。頭が爆発しそう。そもそも、小山田はいつ死んだの?
過去作を読み返しながらじっくりと時系列を計算すれば見えてくるものがあるのかもしれませんが、正直「まだピースが揃ってないんじゃないの?」と思います。赤柳探偵と同様に。
そういえば、短編集『レタス・フライ』の感想ブログを巡回していた時に、『ラジオの似合う夜』に登場したX・Jは海月の母親なのではないか?という考察を見かけました。
時系列的に有り得なくはないけれど、小山田=犀川林かつX・J=各務亜樹良説は、小山田=保呂草説よりもさらに設定に無理がある気がします(どっちかがミスリード?)。
海月が犀川先生に似ている〜という描写が過去作にあるからといって「じゃあ血縁関係があるんだ!」と考えるのは、流石に飛躍しすぎのような気も……。別に他人でも考え方とか雰囲気が似ている人はいくらでもいますよね。
ああもう、せめて(?)金子くん(=金)にはラヴちゃんと幸せに暮らしていてほしいです。ラヴちゃん、ちゃんと元気にしてるんだよね……?(不安……)
カイの"結婚はしていないけど親しい友人(ジャーナリスト)"って、儀同世津子???GシリーズのGって、もしかして彼女のイニシャル……?
親しい、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは雨宮純だったけれど、島田さんが研究所で有名になる前なら、どう考えても儀同さんですよね……。
島田文子も冷凍保存されたってこと?じゃあ、Wシリーズで再登場する可能性は無きにしも非ずって感じですかね? 島田さん以外にも、同じように長い眠りに就いたキャラクタがいるかも……。
島田さんを通して、GシリーズとWシリーズが繋がった気がしました。
それから、Wシリーズと繋がりの深い百年シリーズについても。
ミナス・ポリス(=月の街)計画って、『女王の百年密室』のルナティック・シティ(=月の街?)に関連しています……? どう考えても関連していそうでつらい。
もしかしてカイさん、真賀田四季の技術で長寿になって百年シリーズにも出演していたりします? もうダメだ、考えるのやめよう。
とにかく、今回の作品で、海月及介への見方がかなり変わりました。海月は、どんな気持ちで加部谷と過ごしていたんだろう。
今までは加部谷の相手として山吹先輩を推していた私ですが、海月の事情を知った上でこれまでのGシリーズを読み返したら、「加部谷には海月と一緒になって、海月に幸せをいっぱいあげて欲しい……」と思ってしまいそうです。
ですが、大学生の時の海月はともかく、未来の海月の状況を知ってしまっているので、海月と一緒になったら加部谷は沢山傷ついてしまうのだろうとわかります(『僕に関わらない方がいい』という言葉が痛いほど効いてきました……)。やっぱり山吹先輩が加部谷をどうにか支えてあげてください……。
海月はきっと優しい。加部谷を巻き込まず、ずっと独りでいたんだ。泣ける。
なんだか犀川先生に会いたい。保呂草とか各務とか海月とか四季とか忘れて、犀川先生に癒されたい……。犀川先生がいる時の安心感は異常ですよ(犀川先生への信頼度MAXな私)。
どんな脳みそがあればこれだけ大掛かりで複雑な仕掛けを施せるのでしょうか……。振り落とされないように必死です(振り落とされている自覚がないだけかも笑)。とにかく、ここまで読めたことが本当に幸せです。
(法月綸太郎氏の解説を読んで)
本格ミステリの破壊、かぁ。読者の心も破壊されています。
「これが真の理系ミステリ」という法月氏の解釈に脱帽。理系ミステリ=理系的なギミックを使っている、といつから錯覚していた?(笑)
【追記】
「島田さんの年齢が頂けない」「島田さんの年齢に違和感を覚えた」と低評価気味のレビューを多々見かけるのですが、まさか島田さんの年齢を見て「前の物語からこんなに年月が経っていたんだ……」と思うのではなく、"誤植"、"作者の勘違い"、"特に意味の無い設定"だと思っている人がいる!?!?
0コメント