映画『ベニスに死す』


なんというか、『芸術家と美の化身が出会った』のではなくて、『弱った芸術家が美の化身に出会って』しまったと言う方が的確な感じがする。
美がただそこにある、あっただけの、一方的な出会いだから。
加えて、弱っていた故に病的なまでの妄想と執着が生まれてしまったんだろうな。
多分、タジオの中身は普通の少年だったのではなかろうか。

そして、このストーリーを成り立たせるタジオ役の美少年(ビョルン・アンドレセン)の存在が奇跡。"芸術家を狂わすほどの美しさ"がこのストーリーの肝になるので、そのものすごく高い"美しさのハードル"を意図も簡単に飛び越せる少年の存在がなければ、ストーリーには納得感を全く与えられないわけで……。ビョルン・アンドレセンが出なければ、この映画がここまで歴史に残ることはなかったであろうと容易に想像できる。
初登場シーンでタジオは肘をついて、つまらなそうにしているだけ。それだけで、なんと絵になることか。
(いや、そこにいるだけで全部絵になっちゃうな)

アッシェンバッハ役のダーク・ボガードも迫真の演技。精神はどんどん衰弱しているはずなのに、最期まで不気味なほどの高揚感があった。

カメラワークはかなり古めかしく、間延びしているように感じられる場面も多かった。それはそれで味があるなと思った。セーラー服やボーダーの水着など、昔のファッションに触れられたのもよかった。

〜余談〜
友達に『ベニスに死す』のビョルン・アンドレセンの画像を見せた時のこと。
(どうも会話が噛み合わないな〜)と思ったら、彼女はビョルン・アンドレセンの画像を"絵画"だと勘違いしていたそうです。気持ちはとてもわかるけど、実写映画だよ!と言いました(笑)
夕影巴絵

ゆうかげともえ、と読みます。

哀感パヴァーヌ

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