読書感想メモ『ゴーストハント5 鮮血の迷宮』小野不由美


角川文庫版ゴーストハントシリーズを読み始めて7ヶ月目。予約していた5巻を受け取り、その日のうちに読了しました。端的に言います、
めっっっちゃ怖かった。

毎度のことながら深夜に読んだことを後悔しています。毎度後悔しているのに、懲りずに今日も深夜に読んでしまいました。だって夜に読んだ方がホラーの臨場感が増すし、スリルがあって楽しいんだもん。
というわけで、読了後の恐怖をかき消すために感想を書いています。深夜テンションでおかしなことを書いてしまい、後からサイレント修正するかもしれません。悪しからず。
(追記:なんだか長くなりすぎてしまったので、テキトーに飛ばしながら読んでいただいて結構です)

目次
キャラクター
科学と超自然現象
感想
キャラクター
いま全体的な感想を書くとまとまりの無いものになってしまいそうなので、まずはそれぞれのキャラクターについて。※ネタバレあり
麻衣
境遇の秘密が明かされましたね。麻衣の強さに脱帽する一方、今は明るく強い麻衣が流した涙を思うとつらい。うーん、それにしてもいいキャラ!麻衣が主人公だから、このシリーズが好きです。
ぼーさん
このシリーズはティーン向けということですが、ぼーさんに恋してしまう少女は多かったのでは。と、ここまで読んで思いました。なんだかんだこういう優しくて定職に就いていない男の人(?)はモテるので。
綾子
やっぱり優しい!それに、お姉さん感が増してきている気がします。麻衣がつらい時に沢山寄り添ってくれてありがとう……。
ジョン
貴重な癒しキャラ!今回もシリアスな場面で発された関西弁に救われました。(具体的に言うと、ヴラドは化け物だから狩るのは無理だ、という絶望的な状況でのジョンの一言『神の栄光を恐れへん者を、力で封じることは……』で笑っちゃいました。神の栄光を恐れへん者……笑)
真砂子
私にはわかってました。ツンツンしてるけど実は可愛いってこと!(笑)特別な能力を持っていて、小さい頃から有名で。辛いことも沢山あっただろうけど、麻衣たちとの出会いがそれらを溶かしてくれたらいいなと思います。
安原少年
賢い!面白い!有能!それに、実力の伴った自信家。年齢詐称(二百と三十六歳)のくだりは痛快でしたね。『今の若い人は飢饉なんて知らないでしょうね』って(笑)よくもまあポンポンと出てくる(笑)
リンさん
リンさんもかなり謎多き人物ですが、徐々にわかってきた気がします。実は日本人じゃなかったとか陰陽師じゃなかったとかそれ以外の、もっと内側のことも。リンさんの微笑みをもっと見たい。
ナル
マッドサイエンティストかと思いきや、ちゃんと仲間を心配しているし、ちゃんと人々の安全を考えています。マッドはマッドでも、信頼できるマッドって感じ。
そして、やはり一番の謎多き人物はこの方でしょう。親が教授で、リンさんはナルを監視してる?ナルの師匠?ニセのデイヴィス博士の調査をナルがするの?伏線多すぎません?重大な秘密が明かされる日は近そうです──
──って、あと2巻で終わりじゃん!え〜寂しい。文字通りクライマックスですね。
科学と超自然現象
余談。
いわゆる超自然現象に関して、科学かそうじゃないかって議論があるが、博士はまだ科学じゃない、って断言するわけさ。『(略)科学か否かではない、まず、科学の俎上に載せるための手続きが必要であり、それを行う研究者が必要である』(角川文庫『ゴーストハント5』81ページより)
カッコ内はオリヴァー・デイヴィス博士の著書からの引用です。
対して、私は以前のブログに、
科学は超常現象の対極にあるものだと思っていたが、恐らくそうではなく、つまり、超常現象が科学を包含している。自然科学で説明できない現象を超常現象といい、科学的な調査を突き詰めていけば高次の超常現象に辿り着くことができる、という今の理解であっているかな?
なーんて書いたりしてみましたが、デイヴィス博士によるとどうやら違うようです。私は科学か否かを論議する、というところに辿り着いた時点で満足してしまっていたのですが、デイヴィス博士は科学か否か以前の問題だというのです。すごく厳密。ストイック。
なるほど。超自然現象を科学で議論する前に、まずは科学と同じ土俵に載せなければならないということですね(なんだか卑近な表現になってしまった)。
私が今まで腑に落ちなかった、科学と超自然常現象の関係をどう表現すべきなのかという問題が少し解決された気がします。どっちがどっちを包含しているとか以前に、まだ同じ土俵に載っていない。なるほど(2回目)。その方がしっくりきます。
まあデイヴィス博士の言うことがすべてではないのでしょうが、私が想像していたよりも奥の深~い分野であることは間違いありません。以前の自分さんや、『という今の理解であっているかな?』じゃないよ。恥ずかしいな(怒) 
ところでデイヴィス博士、かっこいいですね。あのデイヴィス博士はニセモノだったので、ホンモノについてはぼーさん情報でしか知らないけど。私、何よりも『知性』『賢さ』『冷徹さ』に弱いんですよね……(知らんがな)。
感想
前置きが長くてすみません。ようやく全体の感想を。※ネタバレあり
今巻もミステリ要素、強い!でも今までのミステリ要素が強かった巻がホラーや超常現象の論理に従って推理されていた割合が大きかったのに対し、今巻はもっと身近な 論理(間取りとか)による推理の割合が大きかった気がします。
実際に生前から犯罪が行われていたこともあって、物的証拠や動機も(常軌を逸してるとはいえ)しっかりとありましたし、ミステリとホラーが溶け合っているというよりは、ミステリはミステリ、ホラーはホラーで独立してしっかりと存在感を発揮していた感じがします。
特に印象に残っているのは、お札に書かれている文が徐々に明らかになっていくくだり。書いている内容も怖いし、右から左に読まなければならないという古めかしさが怖さを増幅させています。
しかもその残虐行為を始めたのは、元々は幽霊(化け物)ではなく生身の人間と来た。犯人は現在の幽霊であり、過去の人間でもある。怖すぎ、ヤバすぎます。そしてナルたちは調査と推理を重ねてその真相に辿り着いたんだから、ホラー小説であると同時にもう立派なミステリ小説ですよね。
ミステリの存在感が大きかったおかげで、オバケ的な怖さだけでなく歪んだ人間の狂気、人間的な怖さをより感じました。今巻が怖かった理由の一つですね。あと人がバタバタと死んでいくのがシンプルに怖すぎる。
そして今巻は洋館で起きる怪奇現象がテーマでしたが、今巻が格段に怖く感じられたもう一つの理由はその洋館にあると思います。
シリーズの今までの舞台だった学校や(一般的な)家は建物の構造もそんなに曖昧なものではなく、空間のイメージがつきやすかったのですが、今回は違います。複雑怪奇な洋館。奇妙すぎる間取り。無慈悲に取り込まれていく人々。得体の知れない空間、これに尽きます。

私の家は転勤族なので、引っ越しを多く経験してきました。そして引越しをする前に、私たちは候補の物件を巡らなければなりません。
物件、すなわち私の知らない空間に入る時、私はものすごく心細く、得体の知れない感覚に襲われます。
この扉を開ければ、どんな空間が広がっているのだろう。この階段の先には、どんな空間が待ち受けているのだろう。何か恐ろしいものが待ち受けているのではないか、と。
小説を読んでいる時とは違って、間取りや構造を描写してくれる語り手はいないのです。自分の身一つで、閉ざされた未知の領域を探検しなければならない。それでも逸る鼓動をどうにか抑えて、平気なフリをして足早に各部屋を回るのです。

このように、未知の空間にいるというだけで、私は耐え難い不安を感じます。「わくわく」よりも「わなわな」の方が圧倒的に強い。小説を読んでいる時でも同じです。語り手にとって未知な空間は、私にとっても恐ろしい。そこが平凡な物件からは程遠い洋館なら尚更。
私は今まであまりホラーに触れてこなかったのですが、自分は洋館が舞台のゴシックホラーを怖く感じるということと、その理由をなんとなく理解できた気がします。
夕影巴絵

ゆうかげともえ、と読みます。

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