読書感想メモ『今夜はパラシュート博物館へ THE LAST DIVE TO PARACHUTE MUSEUM』森博嗣

『まどろみ消去』『地球儀のスライス』に続く、森博嗣の短編集3作目。
刊行順的には、Vシリーズ前半読了直後に読むべきだったのですが……。夢中でシリーズを読み進めていので、すっかり短編集の存在を忘れていました。
G,X,Wシリーズを読み進める前に、読み忘れていた短編集『今夜はパラシュート博物館へ』『虚空の逆マトリクス』『レタス・フライ』を読んでしまおうと思います。

短編集は読んでいない、という森ミスファンもいると思います。しかし、今作『今夜はパラシュート博物館へ』の最初の2つはS&Mシリーズ読者必見ですよ。あの人の結婚、垣間見える犀川・喜多の青春時代、国枝桃子の意外な(?)一面。シリーズ読者へのファンサービス満載です。

以下、各短編について収録順に感想(ネタバレあり)を。ほぼ走り書き。ところどころ文章がめちゃくちゃです。


『どちらかが魔女』

喜多先生ファン、生きてますか? 仕事の後に女性とデートしてる喜多先生も、なんで美人に声を掛けなかったんだよ、と言う喜多先生も、"キャラ萌え"的に堪らないですよね?(笑)
萌絵と犀川先生が話していた通り、今回はちゃんと答えがわかりました!結婚、めでたい!ほっこりしちゃいました。
今はXシリーズを読んでいるところですけど、これもある意味アンチ・ミステリ?

『双頭の鷲の旗の下に』

国枝先生って女子学生の憧れの的なんだ。そんな人と結婚しちゃうなんて、薫田川先生やるじゃん!!きっともうめちゃくちゃ良い人なんでしょうね。あ〜〜好きです(告白)

突然物理の授業が始まりましたが、絵があったおかげで物語の読解に支障がない程度には理解できた……はず。喜多先生の教え方が優しかったので!

私立T学園ってもちろん東海地方の超名門・東〇学園ですよね?
私の母校も相当自由な校風でしたけど、自由なだけでなく、男子校特有の空気感もあるからでしょうか。自分の知ってる高校とは雰囲気が全然違うなぁと。前に男子校の文化祭に行った時も特有の空気感に圧倒されました。犀川先生と喜多先生の学生時代、気になるな〜。

未成年のイニシャル『S』と『H』で瞬時に(SoheiとHokutoか!?)と、みなさんもちろん身構えましたよね!?でも、萌絵らしき人が出てくるし、SoheiとHokutoなら、もう1人は『F』じゃなく『Y』(Yasutomo)になりそうなものだよなぁと悶々。私たちのこの反応も、すべて先生の計算の内なんでしょう?(笑)

『ぶるぶる人形にうってつけの夜』




※Vシリーズの重大なネタバレを含みます!『赤黒緑白』を最後まで読んでからスクロールしてください








やっぱり、フランソワは西之園(佐々木)睦子だった!おそらく、彼女も建築学科だったんですね?
Vシリーズを読んでいない人だったら、萌絵だと思うだろうなぁ。香具山紫子や小鳥遊練無が出てきて、「あ、20年前にタイムスリップしたな」と自然に時を戻せるのは、Vシリーズ読者だけ。
一応この本はVシリーズの途中で出版されたはずですが、これがS&Mから20年前の話だとリアルタイムで気がついていた人はいたのかな。いたらすごい。
でも、不思議。れんちゃんが配置図を思い浮かべながらラーメンを食べたように、私も配置図を見返したけれど……。『MOE』じゃん。この時はまだ、萌絵は生まれてないよね? もしかして時系列の認識が間違っているのかな?(この物語はVシリーズの後の話かな?)とも思ったけれど、保呂草さんがいるということは、やっぱりVシリーズ中の出来事だし……。

『ゲームの国』

「笛が鳴る手、ベニス」は「すべてがFになる」、「目は形見つつ、死体セット」は「冷たい密室と博士たち」……というように、S&Mシリーズ前半作品がアナグラムになっていますね。それから、「ISORI HIROM」は「MORI HIROSHI」。メテさんもアナグラム?
『月は幽咽のデバイス』に登場した「アート・ギャラリィ・プレジョン商会」の意味を知った時、(よくもまあ思いつけるものだ……)と思いましたが、森先生は日常的にそういうアナグラム遊びをしてるんでしょうか。言葉遊び、ワクワクして好きです♪

歩兵親子に金属家族、エラリィ・クイーンだったり犬神家だったり……あちこちに駄洒落やメタ的な要素が散らばっていて、それを探す作業が本当にゲームみたい。何から何までとっちらかって、アンチ・ミステリの極み。

『私の崖はこの夏のアウトライン』

恋人と心中して自分だけ死にきれなかった男の話。片目に眼帯をつけた髪の長い青年は分身のようなもの?

『卒業文集』

読み始めた時は、話題が先生のことばかりだなぁと思いました。視覚的な思い出に関する記述がほとんど無いのでは?とも違和感を憶えましたが、最後の最後まで、皆の目が見えていなかったのだということには気がつけませんでした。
私は障害児教育を専攻しているので、このお話は特別に心に響いた気がしました。

『恋之坂ナイトグライド』

「イーグル」や「ホーク」は気取ったコードネーム的なものかと思いきや、なんと、登場人物たち=鳥だったとは!!
鷲と鷹。「アルバ」は鷺で、外国に行くというのは、渡り鳥だからということかな。
靴のことも鳥の仕業だったんですね。

『素敵な模型屋さん』

頭の中では、完全に少年=森先生のイメージで読み進めていました。好きなものをずっと好きでいられること、その尊さが胸に沁みて、なんだか泣きたくなっちゃいました。

 


この短編集には多種多様なオチがあって、話が短い分濃密で、お腹いっぱいです。ミステリィと短編が秘める無限の可能性的なものを感じた次第であります。


短編集3作目『今夜はパラシュート博物館へ』、解説は漫画家の羽海野チカ先生。短編集1作目は萩尾望都先生、2作目は冨樫義博先生というふうに、漫画家の方々が続いています。自分が好きなものに対しての、すごい方たち(!)による、愛に溢れた文章。読むのがとても楽しいです。
夕影巴絵

ゆうかげともえ、と読みます。

哀感パヴァーヌ

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