読書感想メモ『レタス・フライ Lettuce Fry』森博嗣

『まどろみ消去』『地球儀のスライス』『今夜はパラシュート博物館へ』『虚空の逆マトリクス』に続く、森博嗣の短編集5作目。

刊行順的には、Xシリーズの前に読むべきだったのですが……。夢中でシリーズを読み進めていので、すっかり短編集の存在を忘れていました。



『ラジオの似合う夜』

シリーズに関係の無い短編だと思い込んで読み始めたのですが、別れた女性と『警部』という言葉でようやく、主人公=林さんで、この話はVシリーズ後の時系列の短編なのだと気が付きました。保呂草さんの影も見えてドキドキします。
いや、林さん……罪作りすぎる。女の敵!なのに、少しも嫌いになれない感じ。

『檻とプリズム』

殺す少年の思考。こういうのってきっと、書こうと思って書けるものじゃないです。最後、恐ろしかった……。でも、どこか切ない。この少年はどこへ向かうのだろう。

『証明可能な煙突掃除人』
『皇帝の夢』
『私を失望させて』
『麗しき黒髪に種を』
『コシジ君のこと』

短い5作。詩のような作品だな、と思いました。コシジ君のこと、生きているとずっと信じたかったんですね。信じていれば、少なくともその人の中では真実になる。

『砂の街』

夢みたいな物語ですが、何かを風刺しているんでしょうか。街を砂まみれにしてしまう人間の愚かさみたいな……砂は何の暗喩だろう?わかりません。

『刀之津診療所の怪』

以前、キウイγの感想で加部谷に山吹先輩を激推しした私ですが、このお話の序盤で山吹先輩が(地の文で)言うわけですよ。3年も後輩の加部谷と知り合えたのは海月のおかげだから、とりあえずは海月に感謝しなければならない、って。やっぱり山吹さん、加部谷のことを憎からず思っているんですね!?(圧)
……と思ったら、西之園萌絵に会えるのが一番嬉しいってその直後に(地の文で)言ってて、ズコーッ。
海月山吹がお互いを下の名前で呼びあっているのが気になっちゃいます〜。時系列的にはGシリーズの前だと思いますけど、そんな短期間で呼び方変わったんですかね?それとも、故郷に戻ってきて呼び方も戻った、ということかしら。
佐々木夫人に押され気味な海月がおもろい。なんかキャラ違くない?(笑)
背が高めで黒ずくめでなかなかハンサムな男……まさか保呂草さん?なんて、無根拠ですぐ関連付けちゃう自分に嫌気がさしました。
優しさやインテリジェンスが滲み出ていてめちゃくちゃ印象のいい小柄なお医者さん……しかも、口調が……まさか、れんちゃん?なんて、また関連付けちゃって、もう嫌んなっちゃうな。
佐々木夫人がアルファベットの点対称と非対称の話をしていて、なるほどここで『ぶるぶる人形』と繋がるのか、と思ったその瞬間、私の頭の中を稲妻が走りました。じゃあやっぱり、お医者さんはれんちゃん!?黒ずくめの"男"は、しこさん!?!?うわ、うわ、うわ〜〜〜〜!!!!!泣いちゃう!!!!
不意打ちの再登場に取り乱してしまいました……。犀川先生はすぐに意味がわかったんですね。へっくんとれんちゃんの仲の良さが伝わってきて、じーん。
しこさんの仕事って、なんなんでしょう?警察官?探偵?全然関係ない仕事?

『ライ麦畑で増幅して』

文庫書き下ろし。
このお話を最初に読んでいたら、Xシリーズの印象がまた違ったものになっていたかも。小川さん、本当に彼のことが好きだったんだなぁ。物語の大部分で彼はすでに死者で読者は彼のことをほとんど知らないのに、小川さんの思いが伝わってきて切なくなってしまう。
なぞなぞ。増幅して……そうか、amplify。答えはすぐそこにあったんですね。知っている英単語に変換しないと、なかなか気がつけなかった。
夕影巴絵

ゆうかげともえ、と読みます。

哀感パヴァーヌ

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