読書感想メモまとめ2021.11
『虚空の逆マトリクス』『レタス・フライ』『サイタ×サイタ』『悪夢の棲む家(上)』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』『彼女は一人で歩くのか?』『NO.6〔ナンバーシックス〕#1』『アヒルと鴨のコインロッカー』『魔法の色を知っているか?』『許されようとは思いません』『怖い絵』『怪盗ルパン』『χの悲劇』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『NO.6〔ナンバーシックス〕#1』『風は青海を渡るのか?』
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『虚空の逆マトリクス』森博嗣
『レタス・フライ』森博嗣
『サイタ×サイタ』森博嗣
『悪夢の棲む家(上)』小野不由美
悪霊シリーズ(ゴーストハント)の続編。
麻衣が完全にSPRの「身内」になってるな〜〜ニコニコ。ナルの秘密(?)が無くなったおかげで信頼感も増し増し。コソリって何!?怖い!!小さいときに読んでいたら、家の鏡が怖くて見られなくなっていたかも。
今までは視点が麻衣たち調査する側に置かれていたのに対して、今回は依頼する側の心情が多く入ってくる。
特に広田さんは地の文でも霊能者へのヘイトがものすごく、また、対象年齢が上がったことで霊関係への世間の反応や人間の感情の描写がより「リアル」に寄っている。
そのリアルさや理解されないもどかしさが、より一層恐怖感を掻き立てている。前作からさらに本格派になっていて面白いし、麻衣も調査員になってこれから物語はいかようにも動いていきそうなのに、このシリーズあと1冊終わっちゃうの?🥺
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹
読みやすい小説だった。人を憎まない主人公に愛着も湧いた。トラウマと向き合い、沙羅を手に入れることができるだろうか。とにかく、彼の心の傷はこれ以上増えて欲しくない。
主人公は夢遊病患者とか二重人格者なんじゃないか、本当はやっぱりやってしまったんじゃないか、そう思わせるような地の文の描写。しかし、つくるを追放した当の本人たちは「つくるは、そんなことはしない」と証言する。
仲の良いグループからある日突然追放された理由を探っていく。途中で明らかになっていく事実。シロをレイプしたのは誰か?シロはなぜ殺されたのか?消えた謎のジャズピアニストと捨てられた6本目の指の関係は?灰田の本心は?沙羅と一緒にいた中年男の正体は?
まるで推理小説のようだけれど、この物語の中で正解は示されない。分からないことに妥協し、折り合いをつけ、受け入れながら進まなければならないんだろう……。
『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?』森博嗣
もう、唖然。とうとうここまで来たか、というか。
ウォーカロンは、人間になりきるために「わざと」とぼけなきゃいけないのか……。人間に合わせるために。なんと無駄な。人間がウォーカロンに嫌悪を抱いているから。ミチルとロイディの絆が懐かしい。百年シリーズを読んだ時も"未来"の描写に圧倒されたけれど、Wシリーズはその更に未来の話なんだよね。
はい来ました真賀田四季!四季シリーズをじっくりと読み直す必要がある。本当に、一連のシリーズがこんな何百年にも渡る壮大な世界観を作り出すなんて、『すべF』を読んだ時点で誰が想像できたんでしょう? でも、生きているとは何か?問い続けている根本的な部分は変わってない気がする。
(四季シリーズのネタバレ注意)
『四季 冬』に登場した『犀川』は犀川先生本人なのか、子孫なのか、はたまた幻なのか……と疑問でしたが、ここに来て「人工細胞で長寿になった犀川先生本人」という線が出てきましたね。背筋がゾクッとしました。
『NO.6〔ナンバーシックス〕#1』あさのあつこ
まだ1巻だけれどすでに面白い。人生をめちゃくちゃにされた日からネズミにずっと惹かれていた紫音。紫音へ並外れた恩、というか希望?を感じているネズミ。すごいコンビだな。
あと、ネズミが文学に詳しいの、とてもいい。矯正施設に入れられる前のネズミはどんな生活をしていたんだろう。
『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎
主人公の椎名と琴美があまりにも抜けていて読みながら若干腹が立ったが、人間それくらい抜けているのが普通なのかもしれない。
河崎と偽河崎は外見の描写が確かに違っていたな。偽河崎が全身黒ずくめなのは喪服のつもりなのか。
魅力に乏しい主人公だと感じて要所要所つらかったが、彼は語り手ではあるが、主人公じゃない。だから、透明なキャラクターである必要があったのかな。物語の中心にいるのは河崎、ドルジ、琴美だけだから。
『魔法の色を知っているか? What Colar is the Magic?』
緑、赤、白、黒。これが春夏秋冬すなわち四季を表していることは、これまでのシリーズで読者に刷り込まれている。魔法の色は赤と黒。ウォーカロンの企業の名前はWHITE。あとは、緑に関連するものが出ていたっけ?
魔法の色もこの4色なんだろう、とまんまと思っちゃいました。ハーネームは『四季』ではなくて『ムラサキ』を示していたんですね。なるほどなぁ。ムラサキシキブという偽名を使わせたハギリ博士の発想は、どこから来たんでしょう。
やっぱり、四季はコールド・スリープしていたんですね?四季シリーズだけでなく、百年シリーズも読み返さないと……。若い女性であるカンマパが長だという状況から、デボウ・スホ女王やメグツシュカ女王を連想してしまいました。別の答えがありましたけど。
『許されようとは思いません』芦沢央
『目撃者はいなかった』『ありがとう、ばあば』
自業自得や因果応報といった主題をつけられそうな2篇。『目撃者』の方は、むしろ自分のミスを隠すための工作をあそこまで実行できるのがすごい。ミスを言い出すこともできず、隠蔽工作もできず、事態が大きくなってからバレて絞られる、というのが多くの人の結末だと思う。まあ、どちらがマシかはともかく……。
『絵の中の男』
1人の画家を取り巻く悲劇と因縁の物語。絵の才能は妻に遠く及ばなかったものの、最期にあのような選択をしたという点では、恭介には鑑賞者としての才能があったんでしょうね。
『姉のように』
叙述トリックによるどんでん返し。このような手法の体験型(?)社会批判が新鮮でした。それと、子育てという点でも。子どもを預けられないし、働けないし、任せっきりって感じだし。こんな現状があるから結婚や出産を必ずしも望まない女性が増えてるんだろうな。
『許されようとは思いません』
土砂崩れも、お寺の門が閉まったのも、お祖母さんの仕業と解釈してもいいんでしょうか?最後の最後に希望が見える結末が用意されていて、よかった。
『怖い絵』中野京子
美術検定である程度の知識をインプットした後に読んだが、ますます絵画に興味が出てきた。面白かった。
印象に残ったエピソードはボッティチェリの『ナスタジオ・デリ・オネスティの物語』と、アルテミジア・ジェンティレスキの『ホロフェルネスの首を斬るユーディト』。古典や神話に触れるきっかけにもなる本だった。
『怪盗ルパン』モーリス・ルブラン /榊原晃三 訳
岩波少年文庫。平易な日本語訳で読みやすかった。
とんでもアクション小説ではなく、割と解ける謎がメインの推理小説。紳士かつ大胆不敵な強盗・ルパンが活躍する短編が収録されている。1話完結ではあるものの、それぞれの話に時系列があり、ルパンの成長や恋愛、過去が掘り下げられていくのが面白い。物語の大部分はルパンの視点で描かれており、意外と人間臭く、私が(勝手に)抱いていた"謎めいたルパン像"とはやや異なっていた。
1作目の『ルパン逮捕される』は短いながらも展開のスピード感が素晴らしく、人気爆発のきっかけとして納得の作品だった。お気に入りは『女王の首飾り』。
『χの悲劇』森博嗣
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック/浅倉久志 訳
この世界において人間とアンドロイドを識別するのは、感情移入の有無。ただ、憐れみを持たず、アンドロイドと見紛うような人間もいて……彼は人間?本当に?人間って何?
人間とアンドロイドの違いとは?
生きている、とは?
そのような難しい主題がありつつも、主役がアンドロイドを仕留めるパウンティ・ハンターなので、ハラハラドキドキのサスペンス小説としてテンポよく読むことができた。海外のSF小説って、なんだか難しそう……と思ってたけれど、訳者の手腕もあって想像よりずっと読みやすかった。
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森博嗣『彼女は一人で歩くのか?』を読んだので、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』も読んでみようと思いました。2つの作品の類似点や相違点を考えながら読むのも面白いです。Wシリーズのファンの皆さんはぜひ。
『NO.6〔ナンバーシックス〕#2』あさのあつこ
紫苑からネズミへの際どい(?)セリフや、どうやら経験豊富らしいネズミ。この本に性癖を狂わされた、という友人たちの言葉の意味がわかってきた第2巻(笑)
火藍、強い母親です……😢離れていても信じ合えるこの親子、理想的。 しかし、そんな親子愛などには目もくれず、No.6ごと破滅させたいネズミ。ネズミの鋭さは紫苑へも容赦なく向かいますが、紫苑本人がネズミを信じ切っているのでそこまで恐ろしくはない。
ネズミが送り返してしまった手紙はどのような未来を導き出すのか。ハラハラ(沙布のようなキャラは物語途中で退場してしまう(婉曲表現)気がしてなりません)。
『風は青海を渡るのか?』森博嗣
『目にすれば失い、口にすれば果てる』このフレーズだけで瞬時に百年シリーズを連想してゾッとできるのがすごいなぁ。
ナクチュで冷凍保存されていた絞殺死体はジュラ王子だったりする? やっぱりナクチュの遺跡はルナティック・シティで確定か、と思った矢先の、カンマパからの手紙。『カンマパ・デボラ・スホ』。G-百年-Wが一気に繋がっていく感覚に鳥肌が経ちました。百年シリーズを最後に読んだ時からだいぶ時間が経っているので、今すぐ読み返したいです。ミチルとロイディはどうしているのかな。パティ(ペイシェンス)がいるってことは、再登場の可能性もゼロではないはず。
人間とウォーカロンを識別するシステムが、人間になりかけているウォーカロンを識別するシステムになるかもしれない……。ハギリ博士がこの予感を発想した時、ページに吸い込まれていくような感覚になりました。思考を書くのが上手い。
そして、森先生は本当に、エピローグで読者をゾゾゾーツとさせることがお上手で……。『シキ』。どんな意味があるんでしょう。タナカさんが何か知ってる?それとも、タナカさんのあずかり知らぬところで何かが動いている?
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